「アフターデジタル2 UXと自由」(藤井保文)を読んでいたら、以下のくだりが目に留まりました。
2020年5月に、Netflixが「一定期間サービスを利用していない会員に対し、契約を継続するかを確認し、反応がない場合は自動解約する」ことを発表し、「なんという優良企業!」という絶賛の声を各地で浴びていました。
感想を一言で表せば、こうなるでしょうか。
キャリア公式サイトというガラパゴス空間
まだスマホが世の中に存在しないころ、ガラケー向け公式サイトのビジネスにちょっと絡んでいたことがあります。
公式サイトというのは、NTTドコモならi-mode、auならezwebといったやつですね。
アプリとは違います。
ドコモなどのキャリアに「こんなサイトを作ります。月々の課金はいくらです」みたいな申請をして、それが認められないと公式サイトとして世に出ないという仕組みでした。
登録して課金されてるのに使ってない人がたくさんいたi-mode的世界
この課金は、毎月の通話料と一緒に引き落とされるので、どのサイトに登録していていくら課金されているのかよくわからなくなってしまうという特徴がありました。
これがとっても良かったんですね。
そのころは占いサイトが大流行でしたが、10万人登録があっても毎日見に来るようなヘビーユーザーは1割程度だったかと記憶しています(ちょっと自信はないです)。
死んじゃったおじいちゃんの年金をもらい続けるみたいなビジネス
いずれにせよ、登録だけして見もしないユーザーは大事なありがたい存在でした。
そんな人に「利用してないみたいなので、自動で解約しますね」なんてことは言えません。
むしろ「寝た子を起こすな」というの正しい在り方とされ、メール送ったりとか、使ってないけど登録しっぱなしであることを気付かせるようなアクションは取らないように気を付けていたくらいです。
私の関与したサイトだけかもしれませんが、i-mode的なビジネスはそんな感じに遂行されていました。
それが様変わりです。
前出の本には別の事例も出ています。
例えばAmazonでは、一度買った書籍をもう一度買おうとすると「20XX年X月X日に既に購入しています。もう一度購入しますか?」と聞いてくれます。
ビジネスチャットアプリのSlackは、アカウント数でチャージするモデルですが、登録アカウント数にかかわらず、実際にSlackを利用しているアクティブなアカウント数でチャージします。
i-modeはすでに2019年9月30日をもって新規受付を停止しています。
サービスそのものも2026年3月末で終了することを、ドコモが発表しています。
ガラケー向けの特化型サービスで、機種ごとに違うディスプレイのサイズにサイトを合わせるみたいな細かな調整も必要だった、まさにガラパゴス感満載のサービスでした。
新機種の発売前にはドコモに出向いて、新機種のそれぞれでサイトがちゃんと表示されるかの確認をしたものです。
まことに面倒でしたが、それが普通でした。
その後ガラケーからスマホへの移り変わりが進むにつれて、公式サイトの利用者は減り、公式サイト自体の運営もできなくなってスマホアプリへの切り替えが進んでいきました。
今では、登録したまま忘れてずっと課金だけされていた利用者もほとんどいなくなったはずです。
前出の本にはこうあります。
このような「善意ある行動」ばかりせよというわけではありませんが、こうした一つひとつに社人格が表れます。ユーザーと商品のマッチングばかりを自動化する企業とは大きな差が開いていくことでしょう。
i-modeでH木K子先生の占いサイトを開き、大儲けしていたCバードという会社があったのを思い出しました。
細K数K先生、お元気でしょうか?
ガラケー時代にぶいぶい言わせてたCバードはゲームの会社に業態転換しているようですが、H木K子先生の占いコンテンツは今でも抱えていますね。
では、また次回。